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Rocky's eye No8 「外食産業の最後の賭け」

2年前にシンガポールで一番高級な商業施設“アイオン”がオーチャードストリートにオープンしました。 同施設の地下四階のレストランフロアーで最も集客に成功しているのはタコ焼きチェーン銀タコ(株式会社ホットランド)。 同じオーチャード通りにある高島屋デパートの地下にある2つのタコ焼き屋でもお客の列が絶えることはありません。 銀ダコは、既に、香港、台湾、タイ、シンガポールに進出していますが、店舗の内装、価格帯、メニュー構成は日本と殆ど同じです。 銀タコが日本国内に出店する場合、恐らく1店舗当たりの出店コストは保証金を含めても2000万円、 場所によっては4000万円もかかっているお店もあると思われます。 そのような中、インドネシアの首都ジャカルタを中心に約10店舗のタコ焼きチェーンがあります。 しかも、このジャカルタのタコ焼きチェーンはスーパーのレジ裏で営業している小規模店舗ばかり。 出店コストも1店舗50万円で人件費も1人12,000円/月。店舗サイズが小さいので店舗毎の売上げは大きくありませんが、 利益率は日本を上回ります。その気なりさえすれば、銀タコは日本の1店舗の出店するコストでインドネシアでは100店舗近く開店できるのです。 さて、一見タコ焼きの原価コストは低そうに見えますが、実はそうではありません。 タコ自体が原価の半分を占めているからです。しかも、世界的にタコの不漁が続いる今、銀ダコでもこれまでと同じ原価率を維持することは至難の業のはずです。 銀ダコは年間2500トンものタコを原料ベースで購入していますが、これまでは原料を浜値(漁民の言値)で買い取ってきました。 恐らく、銀タコは、今後は自社で船を漁民に提供して、アフリカ、中国、インドネシアのいずれかでタコ漁を始めることになるでしょう。 現地の漁民と結託することは勇気のいることですが、成功すればタコ焼きの原価は必ず今の半分以下になること間違いありません。 また、銀ダコは日本の価格帯とコンセプトをそのまま海外への移殖を今後も続けるそうですが、 タコ焼き店は1人当たりGDPがUS15,000ドル以下の都市で事業展開すると、成功する確率が極端に下がります。 よって、今後銀タコが、中国を除く(インド含む)アジアで進出できる都市は10都市ほどに限定されるのです。 しかし、ジャカルタの小型店舗の形態ならば、中国を除く(インド含む)アジア地域で300都市、 10,000ヵ所への出店が可能になるなど今までとは全く異なる景色が見えてくるはずです。

さて、今日本の外食産業が少子高齢化と、儲からなくなった国内市場に見切りをつけようとしています。 目指すはアジア市場。しかし、アジア地域がどんなに成長基調にあるとはいえ、 日本の外食企業はいろいろな面で腰を抜かすことになるでしょう。 殆どの企業が、海外に進出する際に、「味」「ブランド」「内装」を最重要視しきましたが、これらが通用したのは10年前の話。 今最も重要なことは、「スピード」です。例えば、日本でも老舗の大手有名ラーメンチェーンA社。 A社は何十年間も国内でラーメン店(直営・FC)経営し国民に親しまれていましたが、最近新たな生きる道を中国に見出そうと、 A社は昨年、中国の南京に本社がある企業から、ラーメンチェーンの中国本土での提携のオファーを受けた際、 相手の中国企業の目標が3年間で中国国内に1000店舗のオープン、 その後、合弁会社を4年目に香港で上場したい意向があることを告げられて腰を抜かしてしまいました。 勿論、中国でも年間200店舗以上のオープンは、ラーメン店の広さが中途半端なことから (中国は大きな面積ほど出店スペースを確保しやすいため)土台難しい話しですが、 中国人は日本の100倍のスピード感で目的達成の為に猛進します。

日本が鎖国をすれば、まず最初に“寿司屋”が倒産することはあまり日本人には知られていません。 理由は寿司屋のネタケースや回転すしのレールを流れる魚の80パーセント以上が輸入品だからです。 鎖国をすれば日本の寿司屋の店舗数は、現在の33,000店舗の100分の1になるでしょう。 国内で養殖も行われていますが、そもそもエサの99パーセントは外国産ですので話になりません。 このように寿司屋を取り囲む環境は年々が厳しさを増しています。一方、海外の寿司店に目を向ければ、そこには意外なヒントが隠されています。 ベトナムのホーチミンでいつ行っても満員の寿司店“ザ・スシバー”は、職人、サービス、お客様までもが全員ベトナム人。 更に、インドネシアにも日本の常識を超えるスーパー回転寿司チェーン「寿司亭」があります。 この寿司亭グループはジャカルタを中心に、バリ、メダン、スラバヤなどに20店舗弱の店舗を運営しています。 客単価はUS24ドル、日本の回転寿司の平均客単価を大きく上回っています。 300坪前後に約200席を構える大型店舗の1日の平均来客数は400名。 寿司亭グループで日本人を見ることは殆どありません。 この寿司チェーンも、寿司を握る職人、サービス、キャッシャー、お客様までもが皆インドネシアジンです。 たまに、日本人が各店舗を回りながら指導していいますが、日本人からすれば見ればお世辞にも、 料理の見た目は完璧とは言い難いのですが、内装はオシャレ。 殆どが、デートや家族の特別の行事に利用されるため、どこのお店でも30分は待たされます。 また、家賃は勿論のこと、内装コストが日本と比較して信じられないほど安価(坪当たり10万円~20万円以下)なので、投資コストを半年で回収します。 インドネシア全体の平均一人当たりGDPはUS3000ドルで決して高くありませんが、この国では、貧富の差が激しいため、 この国のお金落ちは日本のそれと比較にならず、また、日本人の想像を絶する数の金持ちの予備軍が毎年、いや、毎月生まれています。 日本では苦しい戦いを強いられている寿司店ですが、新興国市には、まだまだラストリゾートが残されています。

ベトナム料理と言えば米粉でできた麺“フォー”ですが、フォーはクリントン元大統領がベトナムを訪問した際に食べた料理としても有名です。 ベトナムで一番有名な外食企業はナムアン・グループです。 ナムアン・グループはベトナムでは最先端の管理技術で料理を提供するフォーの専門店“フォー24”や、 最近ではシンガポールに本社があるブレット・トーク(ベカリーチェーン)のベトナムの総代理権を買収するなど、同国で意欲的に外食事業を拡大しています。 日本では、デニーズを運営するセブン&アイ・フードシステムズと提携して、今年7月に市ヶ谷に日本1店をオープンしました。 現在でデニースの母屋を借りる形で営業を行っていますが、今後は多店舗展開を行う計画です。 ナムアン・グループのCEOトラン氏はまだ40歳弱と若く、周囲からは“ドクター”と呼ばれるゴルフ好きな青年です。 しかし、父親が北ベトナム最後の外務大臣であったことは勿論のこと、ドクターは苦労を強いられながら今のナム・アングループを1代で築き上げたことはあまり知られていません。 実は、私は以前ドクターと日本出店に関して1年間ほど交渉をしていたことがあります。価格面で折り合いがつかなかったので結局話は流れてしまいましたが、 当時からドクターには普通のベトナム人にはない非凡な才能と情熱を感じていました。 フォー24の日本1号店は計画を上回っているそうですが、私は、ベトナムで1杯100円以下で売られているフォーを日本価格700円程度で 販売するのにはそもそも無理があり、 長続きしないと思っています。中国に進出する殆どのラーメン店が、ラーメンを中心としたラーメン居酒屋に業態を変更しているように、 既に、フォー24は、フィリピン、インドネシア、韓国、タイ、香港に店舗展開していますが、フォーを前面的に“販売していない”香港店が一番成功していることを鑑みれば、 今後セブン&アイ・フードシステムズは、フォー24を「フォー“が”食べられる店」から、「フォー“も”食べられる店」への業態の転換を求められるでしょう。

この数年間で400店舗以上のファミリーレストランが閉店していますが、昭和45年に日本に第1号のファミリーレストランが登場して以降、 彼らはごく短期間で、それまでの食堂を外食産業と呼ばれる一大産業に育て上げました。 もともと、米国のデニーズやチリズ、カナダではホワイトスポットやビノス等を参考に日本にコンセプトを移殖しましたが、 メニューには日本食を入れ、マーチャンダイジンングや、サービスにも日本流を混ぜ合わせるなど改良に改良を重ね進化し続けてきました。 しかし、ふと気付けば周りにはお客様がいなくなっており、今では、殆どが、「便利」を理由に利用するようになりました。 果たして、1970年代に彗星のごとく現れたファミリーレストランに復活はあるのでしょうか?

 

さて、インドネシアのマクドナルド、ケッタッキー、ダンキンドーナッツやピザハットはどこも長蛇の列が続いています。 以前インドネシア国内に400店舗以上あるダンキンドーナツの、今後の成長戦略に欠かせないのが、 イリヤン・ジャヤ(パパニューギニアと同じ島にあるインドナシア最西の州)への集中出店であることを、 ジャカルタのクタにあるダンキン・ドーナッツの本社で、ラオパチィCEOから伺ったことがあります。 日本では今でもイリヤンジャワには人食い人種しか住んでいない未開の島としか思われていないにもかかわらず、 そのような地の果てに米国の食文化そのものであるドーナツチェーンが集中出店を行う計画を聞き、 食文化の懐の深さと、同時に、飲食事業での儲けのコツを垣間見た気がしました。 恐らく、ピザハット、マクドナルド、ケンタッキー、ダンキンドーナッツ等の現地オーナー達は、 なぜ自分たちの店がいつも流行っているのかあまり理解していないようです。 2億3000万人の人口を有するこの国の国民は、決して美味しいハンバーガー、フライフドチキン、ミザやドーナツを求めているのではありません。 彼らは、ただ単純に“清潔で、そこそこ美味しい料理”を提供する空間を求めているだけなのです。 まさに、1970年代に日本のファミリーレストランが通った同じ道、同じ地点をインドネシアの国民は今通過しようとしています。

神聖な牛を食べないヒンドゥー教の本家のインドのベニハナ(鉄板焼き)が流行ったり、ラーメンブームのジャカルタで起こり、 この国の人口の95パーセントがイスラム教徒であるにも拘わらず、 豚骨ラーメン(イスラム教徒は豚を食べない)がメニューに掲載されていない店から先に市場から退場を余儀なくされるなど、 世界各地で不思議な現象が起こっています。 フランスのパリでお好み焼き店が流行り、モスクワで日本食がバカ売れ、これからはブラジルでの日本食ブームが話題になるでしょう。

世界経済の中心マンハッタン。1980年頃マンハッタンを中心とするグレーターニューヨーク地域には300店舗の日本食レストランしかありませんでしたが、 今では店舗数は10倍に拡大し、殆どの経営者が日本人以外の外国人になってしまいました。 地球規模でマーケットを発掘すれば、日本の外食産業の活躍の場は無限にあることに気付くはずです。

 

拝 Rocky Tamotsu

 




 



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