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Rocky's eye No2 「日本にいた神様」

昭和7年、松下幸之助翁は、友人と一緒に天理教本部を訪ねた際、信者たちが生き生きしながら奉仕に励む姿を目の当たりにして驚嘆しました。 そして、自分の経営する企業もまた、ここと同じように、主人も従業員も喜びのうちに働き、「社会に奉仕してゆく」聖なる事業でなければならないという考えに至りました。 それは、今でもグループの売上の半分近くは買収してきた企業群から生まれ、買収された側からも感謝されている、日本一の買収王松下幸之助翁の原点でした。

入社のために会社を訪れた面接者が、目の前に置かれた椅子に腰掛けても、わざと書類(履歴書)から目を逸らさず、最後に、 部屋を出る時の姿を身体に穴があくほど見つめた松下幸之助翁。日頃から資金、設備、在庫などの経営全般に余裕を持って経営し、 非常時に備えることを独特の言い回しで『ダム経営』と呼びました。これは経営者なら誰でも常に考えていることですが、 ある講演会で『ダム経営とは具体的に何をすればよいのか教えてください』との質問に、『ウーン』と唸り、最後に 『それは 「思う」 ことでっしゃろうなー』 と小さな声でポツリと一言。聴衆は答えになっていないとばかりにざわめいた中、一人若き日の青年社長(稲盛和夫京セラ社長)だけは『思い』という言葉に衝撃を受けたと言います。

『思い』を何よりも大切にし、同時にいつも経営者に一番大切なものは『宇宙観』を持つことだと語っていた松下幸之助翁。 スタンダード石油のロック・フェラーやフォード自動車のヘンリー・フォード、現在ではマイクロソフトのビル・ゲイツなど、いずれも短期間に資産や企業規模を巨大化させた、 世界史に残る偉大な企業家たちです。しかし、どれほど彼らの業績が素晴らしくても、歴史は彼らに『経営の神様』の称号を与ることはないでしょう。 ほとんどの人は(松下の社員でも)、松下幸之助翁が経営の神様と呼ばれている訳を、尋常高等小学校中退の丁稚奉公が、 苦難を乗り越えて世界的な電気メーカーを築き上げた偉大な結果に対する称号だと漠然と思い込んでいます。 しかし、幸之助翁を知れば知るほどそれがいかに間違いであるかが分かります。パナソニックは今でこそ世界的な大企業です。 しかし、今日に至るまでに、幾たびも倒産の危機に直面していました。しかし、その都度全員が力を合わせて・・・ではなく、 ただ幸之助翁の一人の神業に近い粘り強さ、そして、知恵と集中力で会社の危機を克服しているのです。そして最も注目すべき点は、 困難を乗り越えるたびに幸之助翁の経営思想が、経営という範囲を越えて、一人の人間が宇宙観を体得するに至ることでした。

例えば、仮にAという素晴らしい土地をBという人が手に入れたとします。大半の人は、Bさんが充分なお金を工面でき且つ、 タイミングが揃ったのでAという土地を手に入れることができたと考えるでしょう。しかし、それはあくまでも、人間側から見た一方的な考えです。 幸之助翁は、Aという土地もBさんと出会うことを、ずっと待っていたということを素直に理解できる人です。会社がある程度の規模になってからも、 『自分の人生のようで、自分の人生でなかった。自分の好きなことは何一つできなかった』と漏らし、友人の『なぜ成功したんや?』との問いに、 『いつのまにかこうなっとったんや。自分は運を流れに任せただけや』と答えています。『命』が『運』ばれると書いて運命と呼ぶように、 運命に素直に従えばいいのだという諦めが、同時に強烈な喜びと安心を幸之助翁に与えました。そのためか、昭和初期、採用に際し、 『君は自分の運がいいと思うかね』と聞き『いいと思います』と即座に答える者を優先的に採用しました。

幸之助翁は、小学校もろくに卒業できず、その上身体も弱かった者がこのような企業を興こすことがでたのは、 きっと人間の想像力を遥かに超えた特別な働きがこの世に存在するからだと思いました。太陽、地球はもとより、大宇宙に存在する全ての天体の公転・自転が、 宇宙の法則にのっとりながら、一秒の狂いもない完璧なめぐりで動いている。それは宇宙全体が一つの生命体であるからであり、 その生命体の一部として、大自然の山川草木にも、更には、人間や会社にも役目があるとの確信に至り、 いつの頃からか幸之助翁は全てにおいて最善を尽くすが結果は天に委ねるようになっていました。その全てを委ねる天とは、まさしく宇宙をも司る神のことであり、 幸之助翁はそれを『根源』と呼び、松下電器本社とPHP研究所、京都の真々庵(しんしんあん)にお社(やしろ)を設け、 そこに自ら『根源』と書いたお札を置いて毎日お参りをしています。

欧米の殆どの大企業が時価総額の増大を企業経営の最大の目標にしている昨今、経営者も社員も目の前にいるお客様や商品を飛び越え、株価にばかりに目が向き、 いつのまにか、幸福で活き活きと働くことが株価とイコールになってしまいました。効率化とスピードが企業経営の最先端と思われている今、彼らにとって、 事業は人なりと人材教育を柱に掲げ、戦後会社の経営が瀕死の重傷を負っても人員整理を一切行わなかった幸之助翁の経営哲学は、株主の利益に反すると、否定されるでしょう。

『うちの連中はみな幸せと思いながら、働いているやろか・・・』

幸之助翁が亡くなる1ヵ月前、入院先の松下記念病院に営業報告をしにきた役員への最後の質問でした。

拝 Rocky Tamotsu




 



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